「ヤブニッケイ」とは?薬用や香料、防虫効果まで多用途な香り高い日本の常緑樹を写真付きで徹底解説

広葉樹

ヤブニッケイ(薮日経、薮日桂、薮肉経、学名:Cinnamomum japonicum)は、香り豊かな葉と樹皮を持つ日本の常緑高木です。薬用や香料、防虫効果など多岐にわたる用途があり、庭木や緑化にも適しています。

ヤブニッケイの概要

ヤブニッケイはクスノキ科ニッケイ属の一種で、日本では、東北南部から沖縄まで広く分布しています。海沿いから低めの山に自生します。香り高い樹皮や葉が特徴で、古くから日本の生活に利用されてきましたが、ニッケイ(肉桂)に比べると香りや効能が劣るため、薮という文字が付けられたとも。和シナモンとも呼ばれる

分類学的位置・名前など

  • 科名:クスノキ科(Lauraceae)
  • 属名:ニッケイ属(Cinnamomum)
  • 和名:ヤブニッケイ(薮日経、薮日桂、薮肉桂)
  • 学名:Cinnamomum japonicum

形態的特徴・外見

樹高:10〜15メートルの高木〜小高木

葉:楕円形で光沢があり、クスノキ系によく見られる3本の目立つ葉脈を持つ。大きさは6〜12cm程度。シロダモににているが、ちぎるとシナモンに似た少し甘い香りがする。

樹皮:灰褐色で浅い割れ目があり、芳香成分を含む。特に皮目はない。

花:黄緑色の小花が5〜6月に咲く。(写真は花の跡

果実:直径約1センチメートル程度で、秋に黒紫色に熟す。

ヤブニッケイの用途

1. 薬用

ヤブニッケイの樹皮や葉には、精油成分(モノテルペン・シンナムアルデヒドなど)が含まれ、以下の効能があります。

  • 胃腸の健康:消化促進や胃の不調の改善。
  • 抗炎症作用:外傷や炎症の緩和。
  • リラックス効果:芳香成分による鎮静作用。

入浴剤や、塗り薬として活用されます。

2. 香料

蒸留による精油の抽出が可能で、精油は香水やアロマオイル、線香の材料として利用されることもあります。

3. 防虫効果

クスノキ科であるヤブニッケイの精油には、樟脳とにた防虫効果があり、自然由来の虫除けとして使用されます。

4. 燃料や生活用品

あまり大木にはならないため木材は薪などの燃料として利用されるほか、細工物や工芸品に使用されます。

5. 庭木や緑化

常緑樹で美しい樹形を持ち、葉もよく茂るため、庭木や公園の景観樹として人気があります。

ヤブニッケイと生態系

ヤブニッケイは果実が鳥類や小型哺乳類の食料源となり、生態系において重要な役割を果たします。

ヤブニッケイとニッケイの違い

ヤブニッケイは「ニッケイ(Cinnamomum cassia)」や「セイロンニッケイ(Cinnamomum verum)」と混同されがちですが、以下の点で異なります。

  • ニッケイ:中国や東南アジア原産で、シナモンとして利用。
  • セイロンニッケイ:スリランカ原産で、高級シナモンとして知られる。
  • ヤブニッケイ:日本に自生し、主に薬用や香料、観賞用として利用。

ニッキという名前から、シナモンとして活用されるように思えますが、ヤブニッケイはシナモンとしての利用はされません。

おわりに

ヤブニッケイは、その香り豊かな葉と樹皮が薬用や香料、防虫効果など多岐にわたり活用されてきた、日本を代表する常緑樹です。生態系や文化にも深く根付いており、今後も持続可能な活用が期待されます。

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