アラカシ(粗樫、学名:Quercus glauca)は、ブナ科コナラ属に分類される常緑広葉樹で、日本各地の里山や神社の境内、公園などに広く分布しています。
本記事ではアラカシの特徴や用途、似た種類である白樫(シラカシ)やウラジロガシとの違いについて詳しく解説します。
アラカシの基本情報
- 学名:Quercus glauca
- 科・属:ブナ科コナラ属
- 和名:アラカシ(粗樫)
- 英名:Japanese Blue Oak
- 別名:クロガシ
- 分布:日本(本州・四国・九州)、朝鮮半島南部、中国南部、台湾
アラカシは暖温帯地域を中心に分布し、特に関東以西の里山や低山地に多く見られます。樹高は10〜20mほどになり、力強く広がる枝葉と常緑の葉が特徴です。
アラカシの形態的特徴
葉
- 色:表は深い緑で光沢があります。
- 形状:長楕円形で縁に小さな鋸歯(ギザギザ)が先の方から半分程度まであります。また、この鋸歯は、カシ類の中で最も粗くなります。
- 裏面:葉の裏面は灰白色を帯びた淡緑色で、やや毛が生えていることがあります。
樹皮の特徴
アラカシの樹皮は灰褐色で、縦に浅い割れ目があり、少し粗い質感が特徴です。これが「粗樫」という名前の由来とされています。
どんぐりの特徴
形状:丸めで、長さ2〜3cm程度。ぼうし(殻斗)にはカシ類に共通して、横縞模様がある。
成熟期:秋(2年目に成熟するタイプ)。
アラカシの用途
1. 建築・家具材
アラカシの木材は硬く耐久性に優れ、木目も美しいことから、古くから建築材や家具材として利用されてきました。堅く重いことから、木刀などにも利用されます。
2. 炭材
アラカシは炭を作るための材料としても重宝されてきました。特に備長炭や白炭の原料として高い評価を受けています。
日本の三大備長炭である宮崎県の「日向備長炭」は、ほとんどがアラカシを原料として生産されています。
参孝:日向備長炭とは
3. 景観樹・庭木
常緑樹であるアラカシは、1年中緑を保つことから、公園の街路樹や庭木、生垣、神社のご神木としても植えられており、街中でもよく見ることができます。
白樫(シラカシ)やウラジロガシとの違い
白樫(シラカシ)との違い
- 葉の特徴:シラカシの葉はアラカシに比べてやや細長く、葉の裏面が白っぽいのが特徴です。
- 樹皮:シラカシの樹皮は滑らかで灰黒色をしており、アラカシのような「粗さ」はありません。
ウラジロガシとの違い
- 葉の特徴:ウラジロガシの葉はアラカシと形はよく似ていますが、葉の裏がアラカシより白くなることが多いです。落ち葉で、枯れたものの方が白さが判別しやすいです。
- 樹皮:ウラジロガシの樹皮はシラカシとほぼ同じです。そのため伐採後の木材だけだとほとんど見分けがつきません。
簡単な判別方法
アラカシ:樹皮がゴツゴツしている。
シラカシ:樹皮が割と滑らかで、葉の裏が白くない。
ウラジロガシ:樹皮が割と滑らかで、葉の裏が白い。
アラカシの生態的役割
アラカシは森林生態系において重要な役割を担っています:
- 野生動物の食料源:どんぐりはシカやイノシシ、リスなど多くの動物の貴重な食料です。
- 土壌保護:根が土壌をしっかりとつかみ、斜面崩壊を防ぐ役割を果たします。
おわりに
アラカシは、その粗い樹皮と美しい常緑の葉が特徴の、日本に多く分布する常緑広葉樹です。木材としてだけなく、備長炭や薪などのエネルギー源としても、古くから日本の生活を支えてきました。
森林保全や景観形成、生態系維持においても重要な役割を担うアラカシ。現在では公園などにもよく植えられているので、ぜひどのカシなのか、判別しに行ってみてください。
コメント