日本での育林において気を付けるべきこと
こんにちは、今回は、日本での育林において気を付けるべきことを4つご紹介したいと思います。
なぜ育林が必要なのか?
日本は森林率が約68%と世界でも有数の森林大国ですが、その多くは人工的に植えられたスギやヒノキなどの針葉樹です。
これらの人工林は木材生産や土砂災害防止などの目的で造られましたが、近年では需要減少や高齢化などの理由で適切な管理が行われていません。また、木材自給率40%を目指すという政府目標や多大な補助金の投入により大規模機械導入、効率的な伐採を目標とした施業が行われてきましたがその一方で再造林率は3割ともいわれており、次世代に向けて適切な施業ができてるとはいい難い状況です。
その結果、森林が荒廃し、生物多様性や水源涵養機能などの自然環境や社会的価値が低下しています。
そこで、日本では持続可能な森林管理を目指して、国や地方自治体、民間団体などがさまざまな育林活動を行っています。
育林とは、木を植えるだけではなく、適切な間伐や下草刈りなどの手入れも含めた長期的かつ総合的な森林整備のことです。
育林によって、森林は健全に成長し、木材資源だけでなく炭素吸収や景観美化などの多面的な役割を果たすようになります。
では具体的に、日本での育林において気を付けるべきことは何でしょうか?以下に4つ挙げてみました。
1 土地
まず最初に考えるべきことは、土地です。日本では私有地も含めた全国約2500万ha の森林面積がありますが、その所有者は約800万人もいます。[^3^][3]
そのうち約7割は個人所有者であり、平均所有面積はわずか3ha 以下です。[^3^][3]
さらに持ち主の相続が適切になされていなかったりして持ち主がわからない山も少なくありません。
このように分散された所有権や利害関係者が多く存在する中で育林活動を行う場合は、
- 土地所有者や利用者から事前に同意や協力を得る
- 土地利用計画や森林経営計画に沿って施業する
- その土地の特性や歴史、文化などを尊重する
などの配慮が必要です。
2 樹種
次に考えるべきことは、樹種です。日本ではスギやヒノキなどの針葉樹が多く植えられていますが、これらは生育が早く木材生産に適していますが、花粉症や土壌酸性化などの問題も引き起こしています。
また、これらの樹種は戦後の大造林期にもともと広葉樹が生えていた土地に植えられたなどそこの自然環境に適応していない場合もあります。
そこで、育林活動を行う場合は、
- 育林する地域や目的に応じた適切な樹種を選ぶ
- 針葉樹と広葉樹の混交林や多層林を作る
- 希少種や在来種の保全や復元に努める
などの工夫が必要です。
また、植えるための苗の供給も主流の針葉樹はある程度安定した供給がされていますが、広葉樹苗となると種類も膨大で、遺伝的な問題も含めその地域で作られた苗が望ましいですが地域の育苗家は急激に減少しています。
3 手入れ
さらに考えるべきことは、手入れです。
ただ植林をしただけだと雑草との競争に負けてしまう、シカの獣害を受けるなど、植林したのに裸地化してしまう可能性もあります。
そのためその後も定期的に間伐や下草刈りなどの管理が必要です。
これらの手入れは、
- 森林内部の光量や湿度、温度などを調整する
- 森林内部の通風や通水性を向上させる
- 森林内部の生物多様性を高める
- 木材の質や収穫量を向上させる
などの効果があります。
しかし、手入れにはコストや労力がかかりますし、過剰な手入れは森林環境を逆に破壊する恐れもあります。
そこで、育林活動を行う場合は、
- 長期的な計画とどのような山にしたいかというビジョンを根底に持った手入れする
- 森林内部の生態系や自然を尊重する
- 手入れの方法やタイミングを適切に判断する
- 手入れの成果や効果を適切にファクトに基づいて評価する
などの注意が必要です。
4 参加
最後に考えるべきことは、参加です。育林活動は一人や一団体だけで行うものではありません。多くの人々や組織が関わり合って行われます。
これらの参加は、
- 育林活動に対する理解や支持を広げる
- 育林活動に対する責任や権利を分担する
- 育林活動に対する意見や要望を反映する
- 育林活動に対する知識や技術を共有する
などの効果があります。
しかし、参加にはコミュニケーションや調整が必要ですし、参加者間の利害や価値観が衝突する可能性もあります。
そこで、育林活動を行う場合は、
- 参加者間の信頼関係や協働関係を築く
- 参加者間の情報交換や意思疎通を促進する
- 参加者間の合意形成を支援する
- 参加者間の役割分担や評価制度を設定する
などの工夫が必要です。
まとめ
以上、日本での育林において気を付けるべきことを4つご紹介しました。
育林は森林だけでなく私たち自身にも多くの恩恵をもたらします。しかし、現代の日本人は自分たちの生活と森林の結びつきに対する知識が薄まっているため、適切な距離感で責任をもって私たちの森とかかわっていかなければなりません。
育林活動は単純な作業ではなく、複雑なプロセスです。そのため専門家や林業従事者など幅広い立場の人々が協力して管理をしていくことが今後次世代に貴重な森林資源を残していく育林にとても重要です。
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