照葉樹老齢二次林の 21 年間にわたる林分構造の変化 佐藤保

元資料

アブストラクト

宮崎県宮崎市(旧東諸県郡高岡町)の照葉樹老齢二次林に設定した、1ha 試験地にて 1998 年から2019 年までに 21 年間の林分構造を継続観測した。合計 10 回にわたる毎木調査の結果、幹本数は 1998年の 1532 本 /ha から 2019 年には 1379 本 /ha に減少していたが、生存個体の成長により、胸高断面積合計(BA)の値は 45.74 m2/ha から 2014 年時点で 50.97 m2/ha にまで増加していた。しかし、台風撹乱が多数発生した 2015 年から 2019 年の期間に生じた枯死個体によって、優占種の一つであるスダジイで大きな減少が見られ、林分全体の BA は期首(1989 年)とほぼ同等の値である 46.57 m2/ha になっていた。 全期間を通じての枯死率は 1.51%/ 年となり、同期間の加入率(1.01%/ 年)を上回っていた。スダジイやウラジロガシでは小径木個体の枯死が見られたことから、今後の更新にも影響があるものと考えられる。

まとめ

日本の温暖地域に分布している照葉樹林は燃料革命前までは2‐30年周期で人の手が入ることで幼齢、壮齢の薪炭林として存在していたが、人の手が入らなくなってからはシイ類による成熟林化が進行している。

シイ類による極相林化は照葉樹林の一般的な流れであるが、この研究によると21年間の調査でも胸高断面面積(BA)は増加していたが台風の影響で枯死個体が現れたことにより通期での林分全体のBAはほぼ同じになっている。

これは現在日本各地で放置されている里山薪炭林も適切に管理していかなければ極相林化による生物多様性の減少、炭素固定量の低下など悪影響を及ぼす可能性を示している。

逆に適切に人の手が介入することで枯死率が改善するのであればカーボンクレジットとして広葉樹林も活用できるのではないか

針葉樹人工林を管理するのと勝手が違うが、広葉樹林の管理、施業にもしっかりと取り組むべきだろう。

要点

・今回の論文では照葉樹林の林分構造調査は薪炭林の施業改善を目的において行われている。
 老齢林→用材林
 幼齢林→薪炭林
 という区別の仕方をしている

・宮崎ではツブラジイが優先種である

・2-30年で伐採利用されてきた薪炭林の使用放棄の結果についての研究でシイ系はカシ類に比べて成長が早く、かつ高齢シイ類は内部が腐朽し倒れやすいといわれている。

今回の論文における試験地は過去の人為的かく乱によって樹種の欠如や優先度の低下が見受けられた。この試験地は成熟林への遷移途中で、今後も林分構造が変化していくと予想される。

・調査内容について
 ・1Haの毎木調査
 ・記録では146年生である。
 ・毎木調査の結果、記録された樹木種数は1998 年、2019 年ともに 52 種であり、全期間を通じて合計 57 種が記録された。
 ・常緑広葉樹が 41 種、落葉広葉樹 14 種、常緑針葉樹 2 種であった。期間中に新たに加入した種は、アデク、クスノキ、シロモジ、リンボク、タラノキの5 種で一方、クロマツ、コナラ、イタヤカエデ、ヤマグワ、タラノキの5種は期間中に毎木調査の対象とした全個体が枯死していた

・温暖域の優占種はコナラ、黒松である。

・一般に照葉樹林は台風に対して耐性がある

BA:合計断面面積合計 である。胸高の樹木の断面積のこと。

・シイ類のBAの減少は高齢二次林でも見られがちである

シイ類の台風への体制の低さが示される→内部が腐朽しやすく、大木化した場合の強風などに対する耐性が低い

今回の試験地では倒木などによるイスノキがギャップを埋めていた

ウラジロガシは成熟林では萌芽更新が期待できない→日照の関係

胸高直径と枯死率には関係がある

まとめ

大径高齢化樹林では二酸化炭素吸収量が減るだけでなく中期的目線では大径木が枯死、倒れることで在籍量の低下が起こる

老齢二次林から成熟林に林分構造がどう変化していくのかは継続的に観察していく必要がある

若い林で優先的な種が老齢林ではいないことも多い

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