はじめに
セルロースは、地球上で最も豊富な有機高分子であり、様々な場面で利用されてきました。
しかしセルロースについて説明できる人は少ないのではないでしょうか。
植物の大部分を構成する成分であり、木材は木造住宅や家具などに利用されています。それ以外に紙としてや、家電製品や化粧品など幅広く用いられています。
また、近年ではセルロースナノファイバー(CHF)という素材の原料としても注目されています。
この人と密接にかかわってきたセルロースについて、特徴と、期待される未来について解説していきます。
セルロースの構造
- 分子構造
セルロースはβ(1→4)結合で連結されたグルコース分子の長い鎖から構成されます。
- 繊維状の構造: 個々のセルロース分子は水素結合により強固に結合し、微細な繊維状の構造を形成します。
- 結晶性と非結晶性の領域: セルロースには結晶性領域(高度に整列した領域)と非結晶性領域(不規則な配列の領域)があります。
つまりは長い鎖状になった糖類(甘くない)です。極小極細の稲わらの縄をイメージしてもらうとよいかもしれません。
セルロースの特性
- 高い強度と剛性: セルロースの繊維状の構造は、高い機械的強度と剛性をもたらします。
- 化学的安定性: セルロースは多くの化学物質に対して安定であり、生物分解性もあります。
- 吸湿性: セルロースは水分を吸収しやすく、これが紙や繊維製品の性質に影響を与えます。
- 絶縁性: 電気を通さないため、絶縁材料としても使用されます。
とりあえず、強くて、安定で、いろんな特徴があります。
用途
- 紙製品: セルロースは紙の主要な原料です。
- 繊維製品: コットンや他の天然繊維は、主にセルロースで構成されています。
- バイオプラスチック: セルロースはバイオプラスチックの製造にも用いられます。
- 食品添加物: セルロースは増粘剤や安定剤として食品に添加されることもあります。
セルロースナノファイバー
セルロースナノファイバーとは、セルロースの繊維構造をナノサイズまでほぐした素材で、
- 軽い
- 高強度
- 高粘性
- 低熱膨張性
- 半導体性
などの特徴があります。
繊維レベルでは重さが鉄の1/5で、強度が鉄の5倍ともいわれています。
このような特徴を生かし、合成樹脂に添加することで強度を増加させる、電池の蓄電体に利用するなど、様々なところに応用が可能となっています。
食に例えるならば、味の素です。簡単に手に入り、様々な料理をパワーアップしてくれます
実用例:ヤマハ発動機、CNF強化樹脂をエンジンカバーや水上オートバイに採用。
環境的側面
セルロースは再生可能で持続可能な資源であり、生分解性があるため、環境への影響が少ないとされています。さらに、セルロースベースの製品は化石燃料に依存する製品の代替として注目されています。
セルロースには半導体性が認められたため、蓄電池の材料として使用することで、レアアースの使用が削減できるなど、新たな用途に注目が集まっています。
これらの特性と用途により、セルロースは産業界において非常に重要な素材とされています。
まとめ
これらの特性と用途を踏まえ、セルロースは今後も私たちの生活や産業界において不可欠な素材であり続けるでしょう。
セルロースはその豊富な資源性と多用途性、環境に優しい特性を通じて、持続可能な未来を支える鍵となり得る素材です。
セルロースナノファイバーやセルロースの用途が広がることで原料となる木、そして木を生産する林業の復興の一助になってくれることも期待しましょう。
参考資料
参考1
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/70/1/70_24/_pdf
参考2
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/documents/4th-chuukiseika29.pdf
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