広葉樹とは、その名の通り、広い葉を持つ樹木を指し、一年中緑色の葉を持つ常緑広葉樹と冬季に葉を落とす落葉広葉樹があります。広葉樹は針葉樹と比べて、樹種によりますが、より多くの光を必要とします。広葉樹は一般的に針葉樹より成長が遅いため年輪が詰まり、堅い木材となります。また、枝が横に広がっていくように成長します。このような特性が広葉樹の施業を複雑で労力のかかるものにしている一因でもあります。
ここでまず林業における針葉樹林と広葉樹林の施業の違いについて説明しようと思います。
針葉樹の森林の施業の順番は簡単に言うと
- 伐採
- 植樹
- 保育(下刈り、間伐など)
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ですが、広葉樹林では
- 伐採
- 伐採(十数年~数十年後)
というような違いがあります。
スギやヒノキなどの針葉樹は一度伐採するとその切り株は枯れてしまいます。一方クヌギやコナラ、ウバメガシやツバキなどの広葉樹は伐採された後も切り株を適切に整えてあげることで残った切り株から萌芽(芽が出ること)し、この萌芽は数本出るうえに、
- 伐採したときよりも一つの株の材積量が多くなる
- 根が残っているためどんぐりなどの種子から発芽する場合に比べて短期間で成長する
- 既にある根の栄養を使用できるため、下草との競争に強い
といった利点があります。
この「萌芽更新する」という特性により、広葉樹の森は自然災害や人間による干渉からの回復力が非常に高いといわれています。
そのため特に薪炭利用していた時代には地域の里山で積極的に広葉樹施業が行われていました。
しかし石油などの化石燃料が使用されるようになってきてから、そのような広葉樹林は放置されて山に生えている木も太く、年月を重ねています。
高齢化した広葉樹は萌芽しなくなるという研究結果もありますが、紀州備長炭の産地でもある和歌山県には、200年経った切り株からでも萌芽したともいわれているため、詳しいことはわかっていません。
まだまだ謎の多い「萌芽更新」なのです。
日本の国土の6割が森林であり、その中の約半分が広葉樹をはじめとする天然林であるため、広葉樹林を有効活用していくことは日本の林業界において非常に重要になってきています。
日本の林野庁では近年林業を成長産業化させるということで様々な補助金ができ、森林環境譲与税の利用も広がってきていますが、まだそれらは戦後拡大造林された針葉樹林が対象となっています。
今の時代にほとんど忘れ去られている「萌芽更新」といわれる素晴らしい特徴を持つ広葉樹を有効活用して、日本の林業を盛り上げていきたいものです。
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