TCFDとTNFD
近年、気候変動や生物多様性の危機が深刻化する中、企業の持続可能性がますます重要視されるようになっています。こうした流れの中で、企業の財務情報だけでなく、気候や自然関連のリスクをどのように開示し、対応しているかが問われる時代に突入しました。この記事では、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)について、その役割や影響、そして林業や山林業界にとっての将来性について詳しく解説していきます。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とは?
TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、気候関連のリスクを企業がどのように認識し、対策を講じているかを開示する枠組みとして、G20の要請を受けて設立されました。マイケル・ブルームバーグ氏を委員長として2017年に最終報告書が発表され、東証プライムに上場している企業に対しては、気候関連のリスクと機会に関する情報開示が義務付けられています。
TCFDでは、以下の4つの主要項目を企業が開示することを推奨しています。
- ガバナンス:どのような体制で気候変動の影響を検討し、それを企業経営にどう反映しているか。
- 戦略:気候変動が短期・中期・長期にわたり企業経営にどのような影響を与えるか、またその対策。
- リスクマネジメント:気候変動リスクをどのように特定・評価し、どのように管理しているか。
- 指標と目標:リスクと機会の評価において、どのような指標を用いて進捗を評価しているか。
参考:TCFDコンソーシアム
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)とは?
一方、TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)は、自然や生物多様性に関連するリスクを企業がどう捉え、それにどう対応しているかを評価・報告するための枠組みです。自然環境や生物多様性の損失が、今後の経済活動に大きな影響を与えるとされ、44兆ドル以上の経済価値が自然に依存していると指摘されています。
TNFDは、自然消失の脅威を軽減するために、企業が自然関連リスクに対する情報開示を行い、資金の流れを「ネイチャーポジティブ」へと転換することを目指しています。
TCFDとTNFDの比較
TCFDは主に気候変動に焦点を当てた枠組みですが、TNFDはそれに加え、生物多様性と自然資本に関する情報開示を求めています。今後はTCFDに続き、TNFDの開示義務化も進む可能性が高く、企業は気候や自然に関するリスクを包括的に開示することが求められるでしょう。
自然資本と企業活動:具体例
多くの企業が、自社事業が自然資本にどう依存しているかを見直し、その対策を講じています。たとえば、電話会社は電波塔の建設により森林に影響を与えるため、植林活動を行ったり、社員向けに環境教育を実施する取り組みを始めています。また、飲料会社は水源を守るために森林管理を強化し、自治体と協力して持続可能な水源涵養林の整備を進めています。
こうした取り組みが広がれば、今まで林業や山林に関心を持たなかった企業からも資本が流れ込む可能性があり、林業界にとって新たな収入源が期待できるでしょう。
事例2:住友林業の多様性評価など
事例3:サントリー
未来に向けた林業界の役割
今後、企業は「森林保全活動を行っている」といったポジティブなイメージを打ち出しやすくなり、その一環として森林保全に関わる活動がますます注目されるでしょう。その受け皿となるために、林業界も積極的に対応し、自然資本を守る活動に連携していくことが重要です。
まとめ
このように、TCFDやTNFDは企業にとって重要な枠組みであり、持続可能な事業運営を目指すための指標となっています。特に自然資本の価値が再評価される中、林業や山林の保全活動はこれからさらに注目され、企業の持続可能性への寄与が期待されます。
コメント