ヘミセルロースとは?木材の柔軟性と弾力性を支える未来の成分を徹底解説

ヘミセルローストップ画像 用語解説

ヘミセルロースは木材を構成する主要成分の一つで、木材全体の20〜30%を占めています。セルロースとリグニンの間に位置し、強固に結びつくことで木材の構造を補強する重要な役割を果たしています。その特性や利用例、木材への影響について詳しく解説します。

ヘミセルロースの基本情報

ヘミセルロースは、「水や0.2%程度のNaOH溶液には不溶であるが、4~5%NaOH溶液に溶ける植物細胞壁性の炭水化物で、薄い無機酸とともに加熱するとセルロースに比べてはるかに容易で加水分解され、ペントースとヘキソースを生じるもの」と定義されています。

ヘミとは、半分という意味をもち、セルロースの数分の1の長さの高分子です。

ヘミセルロースは木材の細胞壁に含まれる多糖類で、セルロースの周囲を補強する役割を持っています。さまざまな糖類が分岐して結合した構造を持つため、セルロースよりも柔軟で分解しやすい性質があります。

ヘミセルロースの化学構造と性質

化学構造

キシログルカンの構造式

ヘミセルロースは、以下のような複雑な構造を持つ多糖類の混合物で、ヘテロ多糖と呼ばれます。この種類や分岐構造が、植物の種類や、成長段階、部位によって変化しているのが大きな特徴となっています。

  • 主なヘミセルロース:ガラクトマンナン、グルコマンナン、キシログルカン、キシランなど。これらは以下の構成成分が複数結合して、構成される。
  • 構成成分:グルコース、マンノース、キシロース、ガラクトース、アラビノースなどの糖類。
  • 分岐構造:セルロースの直鎖構造とは異なり、枝分かれした形状を持つ。
  • 分子量:セルロースよりも低く、数千程度。

セルロースよりも複雑な構造を持つ多糖類であるため、その構造を利用した高付加価値製品の可能性を秘めているが、構造が複雑であったりすることから、ヘミセルロースに対する理解はあまり進んでいません。

性質

  • 柔軟性:木材に弾力性を与え、折れにくくする役割を果たします。
  • 分解性:化学処理や酵素によって比較的簡単に分解可能。
  • 吸湿性:湿度に応じて水分を吸収・放出する性質を持つ。

ヘミセルロースの役割

木材内の、ヘミセルロースの存在概略図。東京農工大松下研究室HPより

木材の柔軟性を向上

ヘミセルロースはセルロースを補強する役割を持ち、木材全体に弾力性を与えます。これにより、木材が折れにくくなります。

水分の調節

吸湿性のあるヘミセルロースは、木材が周囲の湿度に応じて膨張・収縮する性質を持つため、湿度調整に役立ちます。

ヘミセルロースの利用例

バイオマスエネルギー

ヘミセルロースは、酵素処理によって糖類に分解され、バイオエタノールやバイオガスの原料として利用されます。

製紙産業

パルプの生成過程でヘミセルロースが除去されることもありますが、紙の柔軟性を高めるために調整して利用される場合もあります。

化学製品・食品

ヘミセルロースは、セルロース・リグニンと並んで不溶性食物繊維の一つであり、植物の細胞壁に普遍的に存在しているため、食物繊維として日常的に摂取しています。

また、近年ではその多種多様な構造を生かそうと、分解して得られる糖類を基に、食品添加物や医薬品の原料として利用されます。

例:ロート製薬の化粧品に、広葉樹ヘミセルロース抽出物が採用されました。

ヘミセルロースの課題と未来

効率的な分解技術の開発

ヘミセルロースは分解しやすい性質を持ちますが、産業利用において効率的な分解技術が求められています。

持続可能な素材としての利用

ヘミセルロース由来の糖類を利用したバイオプラスチックや新しい素材の開発が進んでおり、環境負荷の軽減などが期待されています。

おわりに

ヘミセルロースは木材の柔軟性や弾力性を支える成分であると同時に、バイオマスエネルギーや化学製品の原料としても多くの可能性を秘めています。今後、持続可能な社会を実現するための重要なバイオ資源として、さらなる研究と応用が期待されています。

参孝1:ヘミセルロースの構造と分解酵素 前原智子
参孝2:東京農工大 松下研究室

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